浦和の街と会話が生まれる場所に“酒井甚四郎商店”星 由夏さん

変わりゆく街並みの中にも、伝統を残し続けていく意義と想い

さいたま市 浦和区 /「JR浦和駅」 徒歩7分

話を聞いたひと
大熊 あゆ美

━ 何を専門に活動されていますか?

お店の販売を担当しています。店頭での接客や電話注文対応、漬物の詰め作業、陳列などを行っていて、お客様に直接関わる部分がメインですね。
奈良漬、漬物、佃煮があり、奈良漬は当店で手作業で作っています。奈良漬を作って切るまでは、後ろの工場で行っていますが、その後、グラムごとに袋に詰めて、真空にしてシールを貼り、商品として並べるのはお店側の仕事です。一口大に切った商品は、全部で6種類あるのですが、一人暮らしの方や切るのが手間だと感じる方におすすめで、袋から出してすぐに召し上がっていただけるようにしています。

その他、店頭看板で紹介する商品を考えたり、最近はSNSの運用やメディア対応もやっていて、広報にも力を入れています。


━ 活動をはじめたきっかけや経緯はなんですか?

私は、5代目社長のひとり娘で、元々苗字は「酒井」でした。
幼い頃は、「自分も奈良漬屋さんになるんだ」と思ったことは正直ありませんでした。当時は、漬物屋さんの魅力や意義を理解出来ていなかったですし、なんとなく「自分は自分のやりたいことをやっていくんだ」という想いもあったんですよね。父からも、お店のことは何も言われてこなかったですし、父は「自分の人生を進んでいい」というスタンスだったので、大学卒業後は別の業界に就職しました。

しかし、結婚という人生の転機を迎えたときに初めて、「このままお店をなくしていいんだろうか」という思いが生まれたんです。父も含めて先祖代々が築いてきたものを守りたい、そして150年の重みを大人になって理解できるようになったんです。そこで夫に相談をし、ふたりでお店を続けていけるように頑張ろう、というようになったんです。夫には本当に感謝でいっぱいです。

そしてもう一つ、お店を続けていきたいと思った理由があります。それは、昔ながらの浦和の風景であるこのお店を守りたいと思ったからです。昔は、浦和には個人商店がもっと沢山ありましたし、いつの間にかどんどん風景が変わっていきましたよね。もちろん新しいお店が入ってくることは良いことで、私自身、わくわくしながら足を運ばせてもらっています。それでも、懐かしさを感じる場所が完全になくなってしまうというのはちょっと寂しいじゃないですか。そういう街の中にこのお店があり続けていくことが、もしかしたら自分のことだけではなくて、浦和に関わっている方々にとっても何か心に寄り添えることに繋がるかもしれないと思ったんです。
実際、たくさんのお客様から、当店にまつわる思い出話を聞くことも多いんです。「昔、父が好きでよく来てたの」「30年前に浦和に住んでいて久しぶりに浦和に来たんだけど、ここだけ変わらずにいてくれたことに安心した」ですとか。この前も「父が亡くなったんだけど、最後に家族で来たのがこのお店なんです」と、涙ぐみながら話してくださる方がいらして。お客様の大切な方との思い出がここにもあるのだと思うと、本当にお店を続ける決意をしてよかったなと思います。色々な側面で見ても、変化していく街の中で変わらないものがあるというのは、すごく大事なことなんじゃないかなと思いますね。

━ 今後の夢や野望、ビジョンはありますか?

当店が、コミュニティが広がるきっかけとなる場所のひとつになるといいなと思っています。個人商店ならではのお客様との関わり方ってあると思うんです。例えば当店には「ここの場所ってどこですか?」と迷った末にお店にいらっしゃる方も多いんですね。そんなときには、近くまでご案内させていただくこともありますし、私たちがその場所を知らないときには調べてご案内することもあります。こういうのは本当、個人商店だからこそ出来ることなのかなと思っています。浦和に来た方々がそれで喜んでくださったら、私たちも嬉しいですし、そういうことがきっかけで浦和を好きになってくれたら最高ですよね。観光にいらした方には浦和のマップをお渡ししていますが、皆さんとても喜んでくださいます。浦和を楽しんでもらえる取り組みなども、これからしていきたいですね。

また、転居などにより孤独を感じている方もいらっしゃると思うので、気軽にお店に足を運んでいただきたいですね。それで、「お子さん大きくなったね」なんて世間話ができるようになれたら、ひとりじゃないんだって思ってもらえるのかなって。また、お客様同士で「これお勧めだよ」と、伝え合ってくれることもあって、うちのお店がきっかけで会話が生まれることは、すごく素敵だなと思います。うちのお店、本当に素敵なお客様ばかりなんです!

今後は浦和のお店同士のコラボや街と関われるイベントも、積極的に考えていきたいです。あと、うちの包装紙、結構かわいくて好評なんですよ。なので包装紙などを使ってお子さん向けのイベントをしてみたり、職業体験みたいなのもしてみたいなと思っています。

━ どんな人にきてもらいたいですか?

幅広い年齢層の方に、来ていただきたいですね。
浦和に新しく住み始めている方も増えていると思うので、そういった方々にも気軽にきていただきたいです。
最近は若い年齢層の方々にもたくさんご来店いただけています。クリームチーズの奈良漬「チーな」や、奈良漬のパウンドケーキ「パウナ」など、ちょっと珍しい商品もご用意しているので、看板を見て興味を持ってご来店くださる方も多いです。また、ご家族連れのお客様も増えています。「子どもがご飯を食べなくて困っていたんだけど、ここの『ちりめんしらす』を入れたら、ご飯を食べるようになった」「甘口昆布があると、子どもがよく食べてくれる」と喜んでくださる方もいらっしゃいます。スタッフもみんな小さいお子さんが大好きなので、ぜひ気軽に来店していただけると嬉しいです。ちなみに、看板に書かれている店員のキャラクターは当店のスタッフが描いたものなんですよ。

━ スタッフさんへの気配りなど、心掛けていることはどんなことですか?

私はスタッフの皆さんのことが大好きで、一緒に働いてくれていることに感謝しかありません。以前、お客様から「ここのお店に来ると、どの店員さんに接客してもらっても、すごく楽しく帰れる」と仰っていただけたんです。この状態は、すごく理想とするところで「あの人に会うためにそのお店にいきたい」というのは素敵なことなんですが、その人がいなくなったらがっかりされちゃうのは、お店としては不完全だと思うんです。いつどんなときに来ていただいても、お客様が楽しく過ごせて、行ってよかったと思ってもらえるようなお店であり続けることは本当に難しいですが、今その状態をつくってくれているスタッフの皆さんに心から感謝していますし、これからも一緒に働いてほしいなって思います。
今もスタッフさんを募集していますが、お客様の時間を楽しんでくださいということは、絶対に伝えたいです。お店に来てくださるお客様は、本当に素敵な方ばかりなので、ぜひ楽しんで働いてもらいたいです。

━ 浦和への想いを教えてください

変わることは、決して悪いことではありませんよね。浦和の街並み同様、当店もやはり時代と共に変わっていかなければならない。しかし、守っていかなければならないこともたくさんあると思うんです。伝統を守りながら、新しいものを生み出していく。浦和の街も当店も、その想いを大切にしていければいいなと思います。みんなで浦和と言う街を作っていけると素敵ですよね。これからは浦和のお店や企業の方々とも、たくさん繋がりをもっていきたいです。

最後に・・
敷居が高く見えるかもしれませんが、実はとってもフレンドリーなお店です!ご自宅用にも、ちょっとした手土産や贈り物の詰め合わせなども、ご予算に合わせてご提案させていただきます。ぜひお気軽に遊びに来てくださいね!

酒井甚四郎商店

星 由夏
〒330-0062 埼玉県さいたま市浦和区仲町2-4-23
048-822-2110(9:00~18:30(水曜日定休))
酒井甚四郎商店 ホームページ
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