お店立ち上げまでの背景とお菓子作りに込めた店主の想い
さいたま市 浦和区 /「JR浦和駅」 徒歩10分
大熊 あゆ美
━ 何を専門に活動されていますか?
お菓子の製造、販売がメインで、その他、オンライン販売や様々なイベント出店、卸もやっています。お菓子の種類は、パウンドケーキが多いですが、夏はかき氷を作ったり、パウンドケーキの生地をベースにしたクリスマスケーキやキャロットケーキなど季節のケーキも作っています。パウンドケーキは店頭に13~15種類並べていて、春夏秋冬で種類を変えたり、月限定で作っているパウンドケーキもあります。ちゃんと数えたことはないんですが、これまで作ったパウンドケーキは100種類以上あると思います。
繁忙期は、秋の涼しくなってきた時期や12月、3月で、特に3月はホワイトデーや埼玉県庁が近いので異動のときのプチギフトとしてご購入いただくことが多いですね。日持ちがするので、ちょうどいいのかなと思います。
こだわりは、できるだけ埼玉の食材を使っているということですね。農協にもたまに顔を出して、そのときの旬な野菜や果物で使用できるものはないかなと考えています。以前は、見沼でレモンが採れたことがあって、一時見沼のレモンも使用していました。また、卵は久喜、小麦粉は幸手、抹茶は狭山から仕入れています。実は埼玉の小麦粉ってうどんに合う小麦粉なので、焼いたときに重くて沈んでしまいやすいんですよね。なので、お菓子に合う小麦粉かと言われるとそんなに合うわけではないんですが、配合のバランスを調整しながら、埼玉の小麦粉に合わせた作り方をしています。
そして、ひとつひとつ丁寧に作っていることも私たちのこだわりです。
現在、製造スタッフが3名、レジ・袋詰めなどを対応しているスタッフが3名と6名でお店をまわしていますが、お客様に喜んでいただけるようそれぞれのスタッフが自身の仕事に向き合い、丁寧に対応をさせていただいています。
丁寧に仕事をするためには、労働環境も大事にしています。ミキサーは1つしかないので基本的には製造スタッフは1日1名ですが、パン屋さんやケーキ屋さんのようにうちはその日仕上げではなく、日持ちする焼き菓子を作っているので、朝早いわけではないですし労働環境は比較的ちゃんとしている方かなと思います。私が会社に勤務していたときは、労働環境が大変で辞めてしまったということもあって、ここではそういう環境にならないようにしようと心掛けているんですよね。まだ完全に実現はできてはないんですが、なるべくスタッフに負担をかけすぎないように気を付けています。
━ 活動をはじめたきっかけや経緯はなんですか?
元々学生のときは、お菓子の道に進みたいなと思ってはいたのですが、祖父が職人をやっていて甘い世界ではないと聞いていたこともあり、職人の世界は自分には向いていないのではないかとお菓子関連の就職は考えていませんでした。なので、新入社員では機械メーカーの事務職の仕事に就き、今と全く違う環境にいました。メーカーの仕事は安定していたのですが、毎日同じことの繰り返しで、何か環境を変えたいとずっと感じながら仕事をしていたんですよね。私の母からは週5日働いて、週2日は好きなことをやりなさいと言われてきたのですが、週5日と週2日の過ごす時間があまりにも違うので、せっかくなら週5日好きなことに時間を使いたいと思ったんです。
また、事務職のときは人から感謝されることがなかったので、人に感謝されて喜んでもらえる仕事がしたいなと思ったときに、セラピストやマッサージ関連の仕事もいいかなと思ったんですが、あるカフェに行ってケーキを食べていたときにケーキの構造に興味がわくようになりました。そこからお菓子の方向に進んでみよう、進んでみてダメならダメでいいかと一歩踏み出してみることにしました。
お菓子の専門学校に入学し、昼はお菓子のお店でバイトをしながら、夜は学校で勉強するという日々を送っていました。結構ハードではありましたが、若かったのととにかく楽しかったので何とか頑張れましたね。専門学校には2年通い、お菓子の会社に就職しました。しかし、労働環境や人間関係に苦労してしまい、3か月くらいで辞めてしまいました。きっとこれが現実なんだなと感じつつ、その後はバイトをしていた会社に転職しました。異動がありつつも頑張っていましたが、朝から夜まで息つく間もなく働くハードな環境は変わらず、まわりの友達が遊んでいる姿を見ていると私は何をやっているんだろう・・・と思う瞬間もあって。仕事内容、人間関係は良かったのですが、体力がついていかず体調も崩しがちになってしまい、2年くらいで辞めてしまいました。
次はどうしようかなと考えたのですが、お菓子の道から外れることだけは嫌だなと思っていて、デパ地下でお菓子の販売員として働くことにしました。とても販売を徹底している会社で、販売の勉強や配送管理の勉強もさせていただきました。でもやっぱりお菓子を作りたい・・ただ現場に戻ったら同じことの繰り返しではないか・・と迷っていたときに、姉がシフォンケーキのお店を経営している方の講演会があるから行ってみようと誘ってくれて二つ返事で行ってみたんです。その方はお子さんが3人いらっしゃる主婦の方で、お菓子作り未経験の中、自分でシフォンケーキのオンライン販売を行うお店を立ち上げていて、お話をよく聞いてみたら、それだったら私にもできるかもと思ったんです。その方との出会いがきっかけで私も同じようなやり方でオンライン販売からやってみようと決意し、まずは保健所に行き、どうしたら賃貸マンションの一室で営業許可をとれるかを模索しました。
ようやく営業許可が取れて、2009年からタルト、アーモンドベースの焼き菓子、パウンドケーキの3種類のフランス菓子の販売をスタートしました。段々と、バースデイケーキやロールケーキも販売するようになったのですが、屋号は今と全く違う「ピュイダムール」という名前であまり特徴がないので、お店の名前を覚えてもらえなかったんですよね。この屋号はよくないなと思い、オンライン販売を続けていくなら、すぐに検索してもらえるお店の名前にしないとなと・・・。分かりやすく、覚えてもらいやすい店名は何がいいかなと考えていたときにずっと周りの方からは「くみさんのお店」と呼んでいただいていたので、2010年に「くみぱうんど」という名前に変更し、パウンドケーキ専門店としてリニューアルしました。ちなみに、全てひらがなにしたのは、多くのお店の名前が並んだときにひらがなの名前ってすぐに見つけられていた記憶があったからなんです。
SNSの告知はブログから始まり、FacebookやX(旧 Twitter)など様々なSNSが出てきて色んな方法で告知ができるようになってきた頃、マルシェなどのイベントも増えてきたのでイベントにも出店するようになりました。何度か出店するようになると、リピートしてくださるお客様も増えてきて、最初は1~2個お試しで購入してくださった方がプレゼント用にと多く購入いただくこともあり、リピートしてくださることや購入いただく方の顔が見えるっていいなと思うようになり、2015年12月にさいたま市浦和区仲町3丁目に実店舗をオープンすることにしました。タバコ屋さんみたいな感じがいいなと思っていたので、想像通りのお店になり満足していたのですが、コンセプトも決めずにオープンしてしまったので、決めることが多くて結構大変でした。私は三つ子の一番下なのですが、一緒に働いている姉とよく喧嘩していましたね笑。
しばらく、仲町3丁目でお店を運営していたのですが、マンション建設の立ち退きの話があり、移転せざるを得ず、せっかくなら姉の選んだ紅茶も飲んでいただきたい、来てすぐに帰られるよりも一杯休んでいただけるようなスペースを作りたいと思い、2021年1月に浦和区仲町2丁目にイートイン付の店舗にしました。
━ 今後の夢や野望、ビジョンはありますか?
最近、低糖質のパウンドケーキを店頭に並べることができました。作りたいなとずっと考えていたのですが、素材や作り方、配合のバランスが異なりゼロからのスタートだったので結構大変で・・。去年から着手できて、2種類ですがようやく商品化することができました。糖尿病の方や甘いものを食べたいけど控えている方などのために、喜んでいただけたら嬉しいです。最近取材などでも「世の中にどう役に立っていますか?」と聞かれることもあって、あまり役に立てていないのではないかと・・でもこれだったら、世の中のお役立ちにつながるし、糖尿病の方とも美味しくパウンドケーキが食べられるなと思って始めています。今後も、低糖質のパウンドケーキの種類を増やしていきたいなと考えています。
はちみつが入っていないパウンドケーキであれば、1歳未満の小さなお子さんも食べられるので、お母さんにも喜んでいただけています。お砂糖は、甜菜(てんさい)糖を使っていて、甘みはあるけど後味がべたべたしないんですよね。
また、店頭でミニマルシェをしたいなと考えています。商店街としてもやれたらいいなは思っているんですが、普段の業務に追われてしまって、なかなかできないんですよね。でもぜひ今後やっていきたいです。
━ どんな人にきてもらいたいですか?
大切な方へのプレゼントや自分へのご褒美としてご利用いただきたいです。ひとつひとつ丁寧に愛情を込めて作っていますので、大切に食べてもらいたいです。
また、今は40~60代の女性が多いですが、夏はかき氷もありますし、若い方にもぜひ足を運んでいただけたら嬉しいです。
━ 浦和への想いを教えてください
私は旧浦和市出身で、生まれた地域は浦和の東寄りでしたが、この辺りは幼い頃からよく来ていたり、高校が近かったこともあり、すごく馴染みのある地域ですし、ずっと浦和が大好きでしたので、お店を作るなら絶対浦和と決めていました。
浦和の方に認めてもらわなきゃという気持ちもあり、まだまだ背伸びをしている部分もあるのですが、皆さんに認めてもらえるように日々精進しています。良いもの食べたいと仰っていただける方が浦和は多い印象なので、より丁寧に作ろうと思いますね。
うちのスタッフは、お客様に喜んでいただけるよう、毎日真剣に作っているので、ぜひ大切な方にパウンドケーキを贈っていただけると嬉しいです。ロゴは、「熨斗の水引」をモチーフにしていて、熨斗の水引には「結び切り」と「蝶結び」の二種類に区分されます。蝶結びは、ほどいても結び直せて、何度繰り返しても良いお祝い事やお礼として使われるものなので、このロゴには「今後何度でもご縁が続きますように。プレゼントされた方とのご縁も続きますように」という意味が込められています。皆さんのお越しをお待ちしております。