日本の新鮮な野菜・果物を提供したい“清宮青果“清宮 正作さん

地域のお客様との会話を大事にする青果店の想い

さいたま市 浦和区 /「JR浦和駅」 徒歩7分

話を聞いたひと
大熊 あゆ美

━ 何を専門に活動されていますか?
浦和駅西口開発で以前は高砂小学校前に店舗を構えておりましたが、現在は中山道沿いに移転をしました。
お店としては、小売りと卸売りをやっており、小売りは店舗で野菜や果物などをご提供する仕事です。卸売りは、学校・保育園、飲食店、ケーキ屋さん、料理教室に野菜や果物を卸しています。近くだと伊勢丹さんの地下やレストランなど結構様々な場所に卸させていただいているので、皆さんに驚かれますね。朝から5人くらいで作業しているのですが、知り合いから「何やってるの?そんなに従業員必要?」と聞かれることもあります。そのため、午前中は卸しの仕事に追われているって感じですね。
私自身は、毎日朝4時に従業員と2人で浦和中央青果市場や太田市場へ仕入れに行き、帰ってきたら卸しの配達をして、お店でパッキングや陳列を行っています。うちのお店はシャッターが開いた時点でお客様が自由にいらっしゃって商売が始まるという感じなので、そこからは小売りと翌日の卸しの作業をやっています。従業員は、母と妻、アルバイト含め6名いますが、ほぼ1日中何か作業をしていますね。

お店によく来ていただく方は、食材にこだわっている主婦の方が多いですね。また、多くはないですが、お子さんに安全で美味しいものを食べさせたい、学校で食べているものと同じものを食べさせたいと思われて来てくださる若いママさんもいらっしゃいます。高砂小学校では食育の観点で、給食には浦和にある清宮青果の野菜を使っているんだよという話を先生から生徒にしてくれているみたいです。本当に先生に感謝です。

通常のスーパーだと、お客様自身が選んで買っていると思うんですが、うちだとお客様とお一人お一人とお話をしながら、お買い物される方が多いんですよね。特に昔から来ていただいている常連さんはサロンみたいな感じで、お話しに来がてら購入いただく方もいますね。なかなかこういうお店って減ってきていますよね。
今お店には約50種類の野菜や果物を置いていますが、どんなものも自分が美味しいと思ったものやあまりスーパーでは売っていないようなものを仕入れるようにしています。また、有名なレストランでも使うようなオリーブやドレッシングも仕入れています。
美味しいものをご提供してお客様に喜んでいただきたいというのが一番ですが、いいものを仕入れておかないと、市場さんや農家さんからもいい情報がなかなか入ってこないんですよね。いい情報をいただいたときに、積極的にその商品を取り入れていかないと追いついていけないなと感じます。市場さんや農家さんとの信頼関係もすごく大事にしています。

この仕事のやりがいとしては、率先して美味しいものを探して、お客様にご提供できて、直接お客様の声が聴けることですかね。1年中あるものもあるけれど、季節を感じながら仕事ができているというのは幸せな職業だなと思います。


━ 活動をはじめたきっかけや経緯はなんですか?

お店は今年で101年目を迎え、私で4代目になります。お店を立ち上げたときから移転前の高砂小学校前にあったようです。祖父の代から小売業のみでお店をやっており、父の代から卸しが多くなっていきました。当時、祖父は午前中にリアカーを引いて都内まで野菜を仕入れにいき、浦和で野菜を売っていたそうです。どのくらいの体力があったかわからないですよね笑。実は祖父の代は南浦和で農家だったんです。でも祖父が次男だったこともあり、農家を継ぐというよりは、浦和で商売をしたいという想いが強く、浦和の駅前である宿場町で土地を譲ってもらい、商売をすることになったようです。祖父の後は、叔父さんが継いで、その後父という流れで継いでいました。

私は、小さい頃から、仕事の様子を見ていましたので、漠然と自分もゆくゆくは継ぐんだろうなとは思っていましたね。逆にスーツを着てサラリーマンをやっている姿は想像ができませんでした。本格的にお店を手伝うようになったのは大学生の終わり頃で、父が亡くなってから、ようやくちゃんと仕事としてやるようになりました。父の背中を見ながら仕事をしていましたが、最初はすごく父に怒られましたね。

父が病気をして仕入れができなくなってからは、自分が仕入れを担当するようになったんです。私は果物のグレードを上げたり、より美味しいものを仕入れるようにしていたので、お客様の販売価格も上がったのですが、父は時々私の仕入れたものを見に来ては驚きながら「こんなもの売れるのか?」とよく言っていました。でもそのときがひとつの転機だったかもしれません。少しずつご来店いただくお客様の層が変わったように感じたんです。父が仕入れていたときは、いわゆる街の八百屋さんというように今よりももう少し手に取りやすいものが多かったんですよね。それがちょっとずつ百貨店のターゲット層に近づいていったという感じですかね。これまでは近所の方がほとんどでしたが、遠方からも来ていただくようになりました。ちゃんと仕入れたものが売れているところを見ると段々と父も認めてくれるようになって、「お店がきれいになっているし、自分のときよりうまくやっているな」と褒めてくれていたようです。

100年も続けられているのは、浦和の街とうちのお店のコンセプトが、ある程度は一致しているからなのかなと思います。通常のスーパーだと鮮度管理が行き届かないところもあると思うし、今どんなものが美味しいかなどと会話をしながらご提供ができる商売だと思うので、私たちも期待に応えられるように、常にアンテナを張ったり、百貨店を見に行ったり、時期によって旬が南から北に向かうものもあれば、北から南に向かうものもあるので、敏感に捉えながら鮮度にはこだわって仕入れるようにしています。安いからではなく、いいものを。

━ 今後の夢や野望、ビジョンはありますか?

今後、地方にも足を運んで、地方ならではのいいものも仕入れていきたいと思っています。生産者さんと直接顔が見える形でつながって、販売したいんですよね。

減農薬とか有機野菜とか流行っていると思うんですが、自分のコンセプトとしては「美味しいもの」で、その美味しさは「鮮度」が大事だと思っているんです。ただ、私たちは野菜や果物を作っている側ではなく、販売側なので生産者さんとダイレクトにつながって、仕入れる量とのバランスを見ていきたいなと考えています。お客様のニーズと生産者さんとの兼ね合いや、自分のコンセプトとがうまく調和できればいいな。

旬のものの産地を追いかけるようにしているので、季節によって産地も変わるんですよね。そういうことをもっとお客様に伝える努力をしていかないといけないですよね。ただ、私たちが作っているわけではないので、それを伝えていくことで失礼に当たらないかも気にしてしまいます。でも生産者さんがとても美味しいものを作ってくれているので、その想いに対しては応えてあげたいなと思っています。

━ どんな人にきてもらいたいですか?

どんな方でもぜひ来ていただきたいですが、もっと若いお客様にも来ていただくにはどうすべきかは今後の課題ではありますね。ただ、そのあたりも難しくて、日本人にとって「食」って、食べに行くことにはお金を使うけれど、自分が作るための食材に対しては、あんまりこだわりがなくなってきているのかなと感じますし、専門店の強み、弱みもありますよね。特に浦和は商店街がなくなってしまったので、近くの専門店ですべて揃わないからどうしても弱いですよね。
個人のお客様に配達もしているんですが、もっと自分たちも発信していくことが必要なのかなと思います。ライフスタイルと私たちの距離感ができてきているというはありますよね。夜はお店が18時までしかやっていないので、会社帰りにもなかなか寄れないですしね。

━ 浦和への想いを教えてください

街としてのクオリティをあげていきたいなと思っています。私は都内で学生をしていたので、どうしても埼玉っぽさがあるなって感じていて、もっと浦和のいいところがかっこよく写るようになったらいいな。浦和独自のかっこよさがあってほしいなと思います。
また、地区ごとの店舗さん同士のつながりに温度差も感じています。移転前はお客様ではなくても普段から挨拶してくださる方がいましたが、移転してからそのようなコミュニケーションが減ってしまいましたね。

ここにくれば、珍しいもの、美味しいものに出会えると思いますので、ぜひお立ち寄って手にとってほしいです!

ちなみに、母が今習字の先生をやっていて、店舗の看板の文字は母が書いたものなんです。
そんなところにも注目してもらえたら嬉しいです。

清宮青果(有限会社清宮青果)

清宮 正作
〒330-0062 埼玉県さいたま市浦和区岸町7-1-4 細田屋ビル1階
048-822-8007(8:30~18:00)
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