建築の魅力発信と地域とのつながりを大切に“埼玉会館”新井 杏美さん

埼玉会館と地域の皆さんとの橋渡し。日々の活動に込められた想い

さいたま市 浦和区 /「JR浦和駅」 徒歩6分

話を聞いたひと
大熊 あゆ美

━ 何を専門に活動されていますか?

埼玉会館で働く前は、同じ財団で運営している彩の国さいたま芸術劇場に10年間勤めていました。その後、埼玉会館に異動して、今2年目になります。
埼玉会館の公演には、財団主催公演と貸館公演がありますが、私が担当しているのは、貸館公演の方で、主にホールを利用する主催者様との事前打ち合わせや下見対応を行っています。
また、埼玉会館の広報も行っています。広報では、ホームページやSNS、掲示板の貼り替え、それと埼玉会館の魅力発信という意図でイラストマップを作ったり、建築セミナーや見学ツアーなどのイベント運営も行っています。この会館は、1966年に建て替えをしているのですが、建築家・前川國男氏による設計で、近代建築としてもとても魅力的な建物なので、多くの皆さんにぜひ知っていただきたいと思っています。
あと、地域振興として、毎年浦和で行っている「美術と街巡り・浦和」のイベントと連携して、「埼玉会館エスプラナード展」という美術展を行ったり、街や建物の良さを見直すためのフォーラムを開いたりと、結構、仕事は多岐に渡っていますね。

埼玉会館のイラストマップを作成したのは、2019年でした。そのとき、まださいたま芸術劇場にいたのですが、当時の館長やスタッフから、建築のことを知らない方でも建築の魅力を知っていただけるような、親しみやすいイラストマップを描いてほしいと依頼があり、作りました。その後、コロナでテレワークになったこともあり、さいたま芸術劇場版も作ることになりました。さいたま芸術劇場では、建築も素敵なのですが、舞台芸術専門ホールとしての特徴もあるので、そのようなところも紹介しました。さらに、建築セミナーにご協力いただいたつながりで、埼玉県立歴史と民俗の博物館のマップも作ることになり、今は全部で3館のマップがあります。


━ さいたま芸術劇場と埼玉会館で働いてみて感じた違いはありましたか?

さいたま芸術劇場は、舞台芸術専門の施設となっていますが、埼玉会館では講演会や研修会等、どんな催し物でもできるといった違いがあるので、さいたま芸術劇場にいたときよりは、対応する幅が広がりましたね。
元々は、芸術が好きだったので、さいたま芸術劇場に勤めたという経緯もあるのですが、埼玉会館では、困っている人たちのための支援活動だったり、県庁主催のイベントや式典もあったりして、より社会とのつながりを感じますし、様々な取り組みをされている方がいて社会が成り立っているのだなと、視野が広がりました。
また、埼玉会館は「地域の皆さんの活動拠点」という役割が大きいと感じていて、主催公演より貸館公演の方が多いです。
その他、さいたま芸術劇場は、演劇やダンス、音楽のなどのための4つの専門ホールがあり、目的に応じて使い分けられているのですが、埼玉会館のホールは多目的ホールなので、催し物によって音響反射板等を設置したり・・実はそんなホールの違いもあるんです。

━ 活動をはじめたきっかけや経緯はなんですか?

昔から、芸術や舞台が好きだったんですよね。
中学校は演劇部だったのですが、演劇はみんなでつくるものなので、人間関係に少し疲れてしまって・・それで、高校は美術部に入部しました。でも、美術は美術で自己満足に終わってしまうので、何だか物足りなくて・・・大学ではフランス文学科を専攻したのと、学内の劇団に入団をして舞台美術や舞台監督を担当しました。

実は私は幼いときから、自分の好きなことだけをやりたいタイプでして・・中学生のときは英語の授業が好きだったので、高校は文系科目の多い外国語科に進学しました。そこで第二外国語を選択する際、先生から「新井さんは芸術が好きだから」とフランス語をすすめられ、学び始めました。そして、歯医者さんの待合室で「ベルサイユのばら」の本を読んだことや、フランスに1ヶ月ほど短期留学したことを通して、フランスって心の豊かさを大事にしている文化なのかなと感じたんです。それで、大学ではフランス文学科を専攻しました。就職は、フランス関係か、舞台関係か、どちらかに進もうと考えていたのですが、とある劇場の仕事に縁があったので、そちらに挑戦することにしました。いずれの道も、私の中では根底につながっているものがあるかなと思います。劇場は楽しい場所だから、仕事にしたら逆に楽しめなくなっちゃうんじゃないかと思ったこともあったのですが、財団で働いてみて、お客様がどうしたら楽しんでくれるかということを考えられるのは、自分自身も楽しいですし、とてもいい仕事だなと思っています。

━ 日々色んな方と接する中で、心掛けていることはどんなことですか?

自分が笑うと相手も笑ってくれることが多いので、笑顔で接することは心掛けています。(困ったときは、つい真顔になってしまいますが・・・)
また、基本的なことですが、設備などに関して説明する際は、必ずしっかりと確認するようにしています。「ここでやってよかった。また使いたい。」と思ってもらえるように、設備のことだけではなく心地よく過ごしてもらえるような心遣いも意識しています。
以前、個人的にウェディングフォトを撮った時に、担当の方がとてもいい方で、心のこもった対応をしていただいたので、私もそんな風になりたいなと思って、相手がどうしたら喜んでくれるかを考えるようにしています。
私たちは、毎日ここにいるので色んな催し物に関わっていますが、埼玉会館を使っていただく方にとっては「大事な1回」ということは忘れずに対応していこうと思っています。

また、初めて会場をご利用いただく方は、準備~片付けにどのくらい時間がかかるかが分からないことも多いので、事前のやり取りが結構重要なんです。以前、舞台スタッフの方から「こういう細かな時間も確認してあげないと、お客様が本当にやりたいことができなくなってしまうんだよ」と言われて、その言葉が胸に刻まれたんです。私はお客様も舞台スタッフ側も、お互いが快く対応いただけるように橋渡しを行う役割でもあるんだなと感じました。

━ 日々感じることややりがいはどんなことですか?

浦和の方は本当に地元愛が強いなと感じます。埼玉会館は私が生まれる前からあるので、私よりも長く埼玉会館を利用されている方が多くいらっしゃるということも意識しないとなと思います。
やりがいを感じるときは「埼玉会館で公演ができて嬉しい」と言ってもらえたときですね。埼玉会館がみなさんに愛されていることを誇らしく感じます。また、単純に会館の人としての関わりではなく「新井さんだから」と言っていただけるような、人と人との近い関係性で関われるとさらに嬉しいですよね。

━ 今後の夢や野望、ビジョンはありますか?

埼玉会館は、地域の皆さんの施設だということは、強く感じていますので、会館を使ってもらうだけでなく、皆さんにとって憩いの場所だったり、どこか懐かしいな、安心できるなって感じられる場所にしたいです。そういう意味でも、もっと地域の方とつながりを深めていきたいなって思っています。
浦和は、街を良くしていこうと活動している方がとても多くて、皆さんそれぞれが主人公なので、埼玉会館もその一員として一緒に関わっていきたいなと考えています。また、埼玉会館は埼玉県の施設なので、他の市町村も含めた埼玉県のみなさんとの関わりも考えていきたいです。

あと、野望としては、さらにブラッシュアップしたイラストマップ第2弾も作っていきたいです!

━ どんな人にきてもらいたいですか?

色んなチラシもありますし、休憩スペースもあるので、どんな方でもふらっと気軽にきてほしいです。建築家の前川國男氏は、人にとって居心地のよい空間ということを心掛けていたので、共通スペースにある椅子や照明も心地よい仕様になっているんです。


公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団 埼玉会館

新井 杏美
〒330-8518 埼玉県さいたま市浦和区高砂3-1-4
048-829-2471(9:00~19:00(休館日を除く))
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